Segwit(セグウィット)とは|仮想通貨の技術用語・ソフトフォーク
Segwit(セグウィット)とは
Segwitとは、Segregated Witnessのであり、ソフトフォークです。Segwitはブロックチェーンの1つあたりのブロックの容量を圧縮することで、記録を多く入れられるようにするアップデートです。ブロックの容量を圧縮することで、取引をそれまでより速く処理できるようになります。
ソフトフォークとは
ソフトフォークとは、互換性のあるアップデートです。簡単に言うと、仮想通貨の改善にあたります。なんらかの問題を抱えた時に、ニーズに応えるために新しい通貨を作るのではなく、仮想通貨自体はこれまでのままで機能を付け足してニーズに応え、抱えている問題を解決するというものです。その例がSegwitです。
ソフトフォークと対象的なものがハードフォークです。ハードフォークはそれまであった仮想通貨との互換性を無くし、全く新しい仮想通貨を作ることです。ハードフォークには技術的なアップデートだけでなく、既存の通貨との思想の違いなどによっても起こり得ます。ハードフォークの例としてはブロックの容量を8MBにしたビットコインキャッシュや思想の違いで分裂したイーサリアムクラシックなどがあります。
トランザクションとは
結論から言ってしまうと、トランザクションとは取引のことです。ビットコインやイーサリアムがいくら送金されたか、というのがトランザクションです。マイニングをする人はそのトランザクションを承認することで報酬を得られます。そのため、ビットコインを送金する時には手数料が取られます。逆に言うと、マイニングをする側になればそのトランザクション手数料を受け取れるということになります。
Segwit(セグウィット)が必要な理由
Segwitが必要な理由はいくつかあります。Segwitが導入された例として、ビットコインを取り上げて説明します。ビットコインはブロック1つあたり1MBしか容量がありませんでした。ビットコインはもともとごく一部の人しか利用していませんでしたが、多くの人が投機目的でビットコインを保有するようになりました。多くの人が保有したら、それぞれがウォレットを持ち、送金の数が全体的にぐっと増えるようになりました。そこで起こったのがスケーラビリティの問題です。
ビットコインのスケーラビリティ問題
ビットコインは1ブロックあたり1MBしかブロックの容量がないため、世界中の人々が使うには少なすぎます。実際に、ブロック以上の取引がなされ、送金にかかる時間が非常に遅くなってしまうということがあります。ビットコインが世界中の人に使われるのに元々のスペックでは間に合わず、送金に時間がかかってしまい使い勝手が悪くなるというのが「スケーラビリティ問題」です。
スケーラビリティ問題は、送金に数日かかってしまうこと、手数料が高くなってしまうことが根本的な問題です。それを解決するのがSegwitです。Segwitは先ほども言ったように、ブロックの中身(データ)を圧縮することでより多くのデータを処理できるようになります。次はSegwitによって仮想通貨がどのように変わるのか見て見ましょう。
Segwitを実装した仮想通貨
Segwitを導入した仮想通貨はいくつかあります。先ほどはSegwitによって仮想通貨の取引を処理できる量が増えると言いました。今度はさらにSegwitで仮想通貨が具体的にどのように変わったのかを見てみましょう。
ビットコインとSegwit
ビットコインは一番はじめにできた仮想通貨であることから、仮想通貨の王様的なポジションにあります。ビットコインの発行上限枚数は2100万枚であり、円やドルと違ってデフレ通貨です。
埋蔵量が決まっている金と同じように考えられるため、承認作業をマイニングと呼ばれます。ビットコインの承認するときのアルゴリズムをPoW(プルーフオブワーク)といいます。ビットコインはPoWの中でもSHA-256という、マイニングの時間が10分に調節されるように暗号が付け足されていく仕組みになっています。
ビットコインは先ほども述べたようにスケーラビリティ問題に直面し、Segwitを導入しました。Segwitを導入することで、事実上ブロック一つあたり4MBの処理ができるというものです。Segwitによってブロックの容量が4倍になることで、単純計算で4倍の処理ができるようになります。ビットコインは2017年の8月にSegwitが導入されました。
また、ビットコインのSegwitはライトニングネットワーク実装の準備に必要なものでした。
ライトコインとSegwit
ライトコインとは、ビットコインを金とした時に銀のような役割を果たす仮想通貨です。金と違って銀は少し安価で使いやすいものです。2011年に誕生し、ビットコインと同じコンセンサスアルゴリズムであるPoWを取り入れました。ビットコインのブロック生成時間がおよそ10分に対し、ライトコインはブロック生成時間が2.5分です。つまり、ライトコインはビットコインの4倍のスピードで決済できるという仕様になっています。ビットコインよりも処理が速いライトコインもSegwitを導入しています。
Segwitはビットコインのものだけではありません。技術は様々な通貨に導入されています。その例の1つとして、ライトコインもSegwitを導入しています。ライトコインも1MBのブロックサイズでした。ビットコインほど有名でもないため、トランザクションにはあまりがあったのですが、Segwitを導入しました。
ライトコインはビットコインを金とした時の使い勝手の良い銀という意味合いが強いため、基本的な部分はビットコインに近づけていくのではないかと考えられます。
モナコインとSegwit
モナコインは日本発の仮想通貨であり、2chのアスキーアートである「モナー」をモチーフにしています。モナコインは技術もしっかりしており、ビットコインよりも送金がはやく、手数料も安いです。
例えば、バーやパソコンショップやメイド喫茶などでモナ払いできる店舗が多くあります。日本国内の取り扱い店舗の多さでは、ビットコインに次ぐ多さだと言われています。使えるお店が多いと言う意味で実用性の高い仮想通貨です。また、monappyというモナコインでのショッピングを楽しめるオンラインショップがあります。そこで自分が出品できると言うのも魅力的です。
コミュニティが活発なのはそういったものだけでなく、投げ銭機能としてのtipmonaというサービスもあります。twitterのアカウントさえあれば誰でも利用することができ、同時にモナコインを送って感謝の気持ちを伝えることができます。ユーザーのコミュニティから始まるサービスが多いのが印象的です。
あまり知られていないのですが、モナコインは世界で初めてSegwitを導入しています。モナコインを初めてみた人は日本生まれのネタコインに見えがちですが、ビットコインよりも先にSegwitを導入しています。よくわからない人は、モナコインは基本的な機能はライトコインと同じだと思っていただいて構わないです。ライトコインほどグローバルではないですが、モナコインのコミュニティも盛り上がりがあり、日本国内で利用できる仮想通貨です。次はSegwitを導入する際のデメリットを見てみましょう。
Segwitのデメリット
様々な仮想通貨に導入されているSegwitのメリットがある一方でどのようなデメリットがあるのでしょうか。Segwitのデメリットは、1ブロックあたりに処理できる速度が増えるため、マイナーの負担が増えるということです。それだけでなく、マイナーの負担が大きくなる割にマイナーに支払われる手数料が低くなります。
利用する側の手数料が安くなるということは、その手数料を受け取るマイナーの取り分が少なくなると言うことです。そのため、マイナーの数が少なくなることが心配されています。
中央集権的なモデルではないため、何かを変えると誰かが損をするような仕組みになってしまっています。手数料をあげれば送金する人が困りますが、マイナーは得をします。手数料が安くなれば、マイナーの取り分は困り、極論を言うとマイニングをしても利益がなくなってしまいます。
Segwitはライトニングネットワークの準備
Segwitはライトニングネットワークの準備段階と言いました。ライトニングネットワークとは、簡単に言うと知らない人との送受金を安全に行うために技術です。ライトニングネットワークは、マイクロペイメント(少額決済)をするために便利な技術です。
例えば、AさんがDさんに送金をしたいと思ったとします。AさんはDさんのことを知りません。しかし、AさんはBさんと繋がっており、BさんはCさんと、CさんはDさんと繋がっています。こうして、Aさんのチャネルを辿っていくと、Dさんにたどり着きます。知っている人を繋げていくことで、知らない人でも取引の際に信頼できるようになります。
この時、トランザクションがどんどん広がっていってしまうため、この準備のためにSegwitを導入する必要がありました。
Segwit2xとSegwitの違い
Segwit2xは、端的に言ってしまうとビットコインのブロックの容量を元から2MBにしてしまえばさらに処理できる数が上昇するのではないかという理論のもと、ビットコインのブロック1つあたりの容量を2MBにするというアップデートを施すというものです。
しかし、ブロック1つあたりの容量を2MBにしてしまうと、手数料がさらに安くなってしまいます。そうすることでマイニングをしていた人たちの取り分がこれまでよりもさらに少なくなってしまうという問題がありました。
ビットコイン・コア派と呼ばれる元々ビットコインの開発に携わってきた人たちはユーザーのことを考え、Segwit2xを推していましたが、Bitmain社のCEOジハン・ウー氏を含むマイナーは自分たちの取り分が少なくなってしまうことを危惧して反対していました。ビットコインのその後の決定権はマイナーたちが投票を行い、過半数を占めれば決定というものだったのでマイニングをしている人たちの猛反発がありました。
しかも、反対した人たちは新たにビットコインを作ろうとしました。つまり、ビットコインとほぼ同じ仮想通貨を価値が0の状態で再スタートしそうになりました。そうなると価値は分散し、ビットコインをここまで育ててきたビットコインコア派も手数料を報酬としてもらえるマイナーも損をするため、Segwit2xは実行されませんでした。
もしSegwit2xが実行されていたら、今のビットコインはなくなっていました。ビットコインがビットコインをつぶすという、最悪のシナリオが描かれていたはずですので、Segwit2xは実行されなくてよかったです。現在、ビットコインに流れたお金がアルトコインに流れていくという流れがあるため、ビットコインの価格が急落すると他の仮想通貨も急落してしまいます。
Segwitは仮想通貨の可能性を広げる技術
ビットコインだけでなくライトコインやモナコインもSegwitを導入しています。つまり、仮想通貨をより使いやすくするための技術であるということがわかります。Segwitに限らず、ライトニングネットワークなどのソフトフォークなどのアップデートにより、これからの仮想通貨がどのように動いていくのかが変わってきます。思想の違いや利害関係により対立することもありますが、これから様々なアップデートによってユーザビリティが上がっていくことでしょう。